原案:山上 加筆:岡崎
素潜りとは
素潜りとは、酸素タンクなどの潜水器具を使用せずに、自分の息だけで潜水することです。
「スキンダイビング」とも言われています。
「スノーケリング」や「スクーバダイビング」と混同されがちですが、それぞれ異なる点があります。
スノーケリングは浮力を使いながらの水面遊泳に対し、素潜りは水中を潜ります。
スクーバダイビングは重器材を使用し、水中でも呼吸をしながらの潜水に対し、素潜りは最低限の装備で息を止めて潜水します。
また、スクーバダイビングは資格を必要としますが、素潜りにはこれがないと素潜りができないというような資格制度はありません。(厳密にはダイビングにおいても、ないとできないという資格はありません)
ただし、アプネアアカデミー、PADIフリーダイバーなどの、認定資格はあります。
素潜りができるようになると、魚を間近で見られるだけでなく、魚突きやドルフィンスイムを行うことができます。
また、フリーダイビングのように潜る水深を競う国際的なスポーツにも加わることができます。
素潜りは、自由度が高く、やろうと思えば、一人でもできてしまいますが、その分、危険を管理する環境に乏しく、自己責任の側面が強い為、準備不足が命の危険に直結します。
また、魚突きをする場合には、地域ごとの法律や条令、漁協の方針や、ローカルルールなどがあり、それらに違反すると密漁にもなり得ます。
潮流、サメ、天候、船の航路など、危険の種が多いため、安全に素潜りをするには、それなりの準備を必要としますが、今のところ、そうした教育機会はそれほど多くは無く、独学によるもの、人づてによるものがほとんどです。
素潜りに必要な道具
3点セット
3点セットとは、マスク、スノーケル、フィンのことです。自分に合ったものを準備しましょう。
また、使用用途によっても、異なります。
水中動画を撮影するのに適したマスク、フリーダイビングで記録を出す為に適したマスクなどがあります。
スノーケルひとつでも、ダイビング用とスノーケル、スキンダイビング用では異なります。
フィンにいたっては本当に多様です。
素材と長さ、足をホールドする仕方の種類など。使用用途に適したものを選ぶ必要があります。
魚突きにあったフィンがあり、フリーダイビングにあったフィンがあり、それぞれ違います。
ドルフィンスイムもまた、違います。
そして、脚力によっても異なるため、一概に、このフィンがいいとは言えません。
本当に自分にあったフィンを手に入れようとしたら、やはり、一度、素潜りに詳しい人に見てもらい、アドバイスを受けるのが一番だと思います。
また、マスクは、耳抜きができるものである必要があります。
ゴーグルは中に空気をいれることができない為、水圧によって、深場で目に食い込むため、素潜りには向いていません。
(中に水を入れて使用するリキッドゴーグルは別)
一眼のマスクの場合、鼻が押さえられない場合があり、手による耳抜きができない為、こちらもおすすめしません。
ウエットスーツ
マリンスポーツなどを行うときに使用する保護スーツです。
体温を保つだけでなく、日焼けや怪我のも防止になります。
くらげから体を保護することもでき、また、緊急時には浮力を確保します。
見栄えは、水着のほうが良い場合もあり、夏は水着で海に入るほうが気持ち良いこともありますが、
安全に素潜りをすることを目指すのであれば、ウエットスーツは必須となります。
様々な型がありますが、全身を覆う長袖、長ズボン上下一体型の「フルスーツ」が素潜りではおすすめです。
皮膚や浮力確保の面で、もっとも保護する能力が高いからです。
フルスーツのなかにも、素材により、ジャージ、スキン、ドライなどがあります。
ドライを素潜りで使うことはほぼないと言って良いかと思います。
ドライスーツは、素潜りの激しい動きには適していません。
スキンは保温性が高く、冬場でも寒さを感じることなく、海に入ることができますが、破れやすく、メンテナンスが必要です。
ジャージのウエットスーツは、ほぼメンテナンスフリーで丈夫ですが、保温性の面ではスキンに劣ります。
一般的に厚さが厚くなるほど保温性は高くなります。
また、本格的に自分にチューニングされたものを使用する場合は、体型にあったオーダーメイドのウエットスーツを注文するのが一般的です。
既製品よりも、オーダーメイドのほうが高いですが、その分、保温性にすぐれ、かつ動きやすい素潜りが可能となります。
素潜りの学校で使用している5mmのウエットスーツ(ジャージ)
素潜りの学校で使用している3mmのウエットスーツ(ジャージ)
ウエイト
ウエットスーツを着用すると浮力が発生します。その浮力を打ち消すものがウエイトです。
ウエイトなしでもウエットスーツを着て素潜りをすることは可能ですが、浮力がある分、余計な力を使う必要があります。
ウエイトは、鉛でできた重りをベルトに通し、バックルとよばれる留め金部分で固定します。(金属ではないこともあります)
素潜りの学校では3mmウエットスーツに対して、大人は2kg、子供は1kg。
5mmでは4kg、子供は2kgを目安としています。
初心者の場合は更にウエイトを少なくし、浮力を確保することを優先します。
適正なウエイトの重さとしては、フィンを使わずに立ち姿勢で浮かび、目線の高さに水面がくるぐらいが丁度良いとされています。
ウエイトは必ず左右、バランスよくなるように配置し、バックルは真ん中に来るように調整します。
ベルトが長くでてしまっても、ベルトを折ったり、中にいれたりしないようにします。
緊急時にすぐに外して、浮力を確保したり、浮上したりできるようにするためです。(クイックリリースシステム)
ダイビングでは、ベルトが右から左に抜けている状態に統一して、装着することがガイドラインとして示されています。
また、装着するときは、立ったまま装着するのではなく、腰に載せて、苦しくない程度に、きつく締めて、ずり落ちないように固定します。
グローブ
岩場や珊瑚などで怪我をしないために装着します。
グローブがなければ軍手でも構いませんが、冬場は水を通しにくいものでないと手が冷えてしまいます。
海中洞窟や沈没船などで素潜りをする際は着用をお願いしています。
魚突きをする際には、銛が滑らないように、滑り止め付のグローブが必要となります。
また、分厚いグローブの場合、細かい作業ができません。魚突きをする場合には1、5mm程度のものをおすすめします。
水深計
どのくらいの深さを潜っているのか知ることができます。
ダイブコンピューターでも水深は測れますが、割高になります。
素潜りには残留窒素を計測する必要がないため、コンピューターが入っている必要はありません。
水深、水温が分かれば事足ります。
耳抜き
耳抜きの必要性
耳抜きとは、鼓膜の内側と外側の圧力差を解消することをいいます。
エレベーターや飛行機に乗っているときに気圧の変化によって耳に違和感が生じることがあります。
同様に、素潜りでは水圧により耳の違和感が生じます。
この耳抜きができないまま潜ると、耳が痛くなったり、鼓膜が破れたりすることがあります。
耳抜きの方法
マスクの上から人差指と親指で鼻をつまみ、口を閉じてティッシュで鼻をかむときのように空気を送ります。
耳がポコンといったり、スカッという感じがしたら耳抜きができたことになります。
このとき鼻から空気がもれないようにしっかりとつまむようにします。
また、片方だけ抜けないことがあります。
抜けていない方の耳を上にあげるようにして試してみると良いでしょう。
最初のうちは最低1mに1回は行うようにします。
耳抜きができていない場合は無理に潜ることをやめ、海面や陸上でできるようになってから、少しづつ潜ってトレーニングします。
風邪や花粉症や鼻炎、前日のアルコールなど、体調によって抜けにくいことがあります。
どうしても耳抜きができない場合は、一度耳鼻科で見てもらうと良いでしょう。
耳抜きの練習方法
- オトベントを使った耳抜きの練習方法
耳抜きの練習器具に「オトベント」があります。陸上で練習できる風船のようなもので、耳抜きの感覚や空気を送る量(風船がグレープフルーツの大きさで2秒間維持)を確認することができます。
- フロートを使った耳抜きの練習方法
水中での耳抜きの練習には、フロートを使用します。深場にロープ付のフロートを持っていきます。フロートのついていない方のロープの先を海底に結び、フロートを固定します。以下の2つの方法で練習を行います。1回1回耳抜きはできているか、確認しながら定着させていきます。耳抜きができていない場合は潜水を控え、できるようになってから練習を続けます。
- ロープをたぐりながら潜水
フロートをつかんで3回深呼吸をします。最後に空気を吸ったら、ロープをたぐりよせるようにして潜水します。水深1mごとを目安に耳抜きをします。フィンは使いません。
- ロープに沿いながら潜水
ロープをつかむのではなく、親指と人差し指で輪をつくり(OKのサインと同じ)、その中にロープがある状態にします。3回深呼吸をしてから潜りますが、今度は手の力は使わずに、フィンを使って潜っていきます。
素潜りの時の耳抜きのやり方のコツまとめ30選※素潜りを1000人以上教えてきた中でわかった、なかなか抜けない人も抜ける耳抜きのコツ30tips
ジャックナイフ
「ジャックナイフ」とは、水面から潜る方法です。90度体を曲げて潜る姿がジャックナイフに似ていることからそう呼ばれています。効率よく、スムーズに潜れるようになります。
ジャックナイフの方法
(1)水面で体をうつぶせにして浮かびます
(2)呼吸を整えて、すってから止めます
(3)腰をまげ、逆立ちをするように足を高くあげます
(4)足が入りきらなかったら、両手でひとかきしたら足を水中にいれます。
(5)耳抜きをしながら、バタ足で潜ります。
上半身を曲げきらずにフィンを使って潜ってしまうことがあります。
しっかりと頭を下にもっていき、足を水面にあげれば、浮力がかからなくなった足の重さで自然に沈んでいきます。
人間は頭部が一番重いので、きちんと頭を下に下げれば自然と沈みやすくなります。
焦って足を動かすと、水面でバシャバシャと波が立ち、うまく潜ることができません。
ジャックナイフのよくある悪い例
・腰の曲がりが浅い→真横、または斜めに潜ってしまう
・でんぐり返ししてしまう→腰だけでなく膝が曲がっている場合が多いです。膝は伸ばしたままです。
・足が水中に入りきらず、水面をバタバタしてしまう→足が水面に高くあがっていない または、ウエイトが軽すぎる
・エントリーしても浮いてきてしまう→フィンが動いていないか、弱い
・通常は耳が抜けるのに、ジャックナイフだと耳が抜けない→他のことに気がとられて、耳抜きがおろそかになっている
ジャックナイフのちょっとしたコツ
・止まってからいきなり潜るより、少し前に進みながらジャックナイフをしたほうがスムースなことがあります。
・エントリーするとき、立ち泳ぎから潜るのではなく、けのび状態から潜るほうが楽です。
・潜る直前、ゆっくり3回深呼吸し、気持ちも落ち着かせてから潜ると水中での息止めが長くなります。
より深く潜るには※素潜りで10m潜る
潜っているといつか自分自身の限界にぶつかることがあります。
その最大のものが、水中で、すぐに息が苦しくなるというものです。
素潜り中に息が苦しくなる理由
素潜りで息が苦しくなる理由は、二酸化炭素の血中濃度が高まるからです。
酸素の濃度が低下するからではありません。
つまり、酸素が残っていても、二酸化炭素が一定以上貯まれば苦しくなります。
逆に言えば、苦しくても、まだ、酸素はある、ということです。
酸素が一定以下になると、ブラックアウトといって、水中で意識を失います。
意識を失う理由は、酸素がなくなって、意識を保っていられなくなったから、ではなく、
脳が酸素を大量に消費する臓器であるため、酸素が一定以下になると脳が壊れていくからです。
脳を守る自己防衛反応として、脳をスリープ状態にするというのがブラックアウトのメカニズムです。
そのため、ブラックアウトしても空気が顔にふれると、呼吸を再開することがあります。
ポイントとなるのは、苦しくても、まだ意識は保っていられるということです。
酸素を消費するのは脳です。
水中で苦しくなったときに、多くの人は恐怖を感じます。
この恐怖が脳をフル回転させてしまい、酸素をあっという間に消費してしまいます。
場数を踏んで、苦しくてもすぐに意識を失うことはないということが分かっていると、恐怖を感じにくくなるので、酸素消費量が減ります。
結果として、水中での滞在時間が長くなります。
そのうえで、息止めを長くするために、酸素をなるべくたくさん体に取り入れる、普段とは異なる、「素潜りのための呼吸」を練習します。
素潜りで長く息を止める為の呼吸の練習方法
右手を胸、左手をお腹にあてて行います。
息を吸うときは、背中、お腹、胸の順に下から積み上げるように口から空気を入れます。
「入れる」と言っても難しいので、「膨らます」というイメージをしましょう。
息を吐くときは、胸、お腹の順に口から空気を出します。
吸う息が5秒だとしたら、吐く息は10秒と吐くほうを2倍にします。
「スー・・・」と音を出しながら吐きます。
吐くとき、お腹を最後までへこませてから、更に横隔膜を引き上げるイメージで、肋骨の下のお腹の皮を上に引き上げます。
横隔膜の筋肉をトレーニングすることで、肺活量と肺活力(空気を吸って吐く力)が鍛えられます。
また、胸式呼吸だけではなく、腹式呼吸だけではなく、両方を使い全身で呼吸することで取り入れられる酸素の量が増えます。
実際にジャックナイフでもぐるときは、手を当てる必要はありませんが、全身を使うイメージで呼吸し、最後に吸うときは空気を飲むように空気を体に取り入れてから潜ります。
素潜り中の息止めを長くする水中動作
呼吸とともに気を付けたいことが、水中での動作です。
深く潜りたいからと、慌ててフィンキックをしたり、気持ちが焦ったりすると、息が苦しくなってしまいます。
深く潜るにはゆっくりと動くことが大切です。
また、考え自体もできるだけ考えないようにします。
考えないということはなかなかできるものではありません。
普段あれこれ考えていること自体に気づくこともなかなかないので、考えそのものをとめるということも、はじめのうちはよくわかりません。
そのため、お勧めの方法としてはゆっくりと数を数えるということです。
数をゆっくり考えることで、他のことを考えることを防ぎます。
精神的なことも息の長さに影響するので、なるべく恐怖心を取り除き、静かに穏やかに水中に潜ります。
素潜りをやる人にヨガや瞑想をする人が多いのは、こうした心穏やかな状態、無心の状態に意図的に自分をもっていくトレーニングとなるからです。
頭の中で好きな音楽を流したりする人もいます。自分にあった心を落ち着かせる方法を探してみると良いでしょう。
また怖いイメージよりも楽しいイメージのほうが呼吸は長続きしやすいです。
イルカと泳いでいるときにいつのまにか深く潜っていた。苦しくなかったという体験を持つ人が多いのは、それが楽しいものであるからかと思われます。
素潜りは、マリンスポーツではありますが、頑張る、鍛える、とは正反対の方向にあるようなものであると思われます。
なるべく頑張らない、力を抜く、手放す、捨てる。楽する。
素潜りの危険性
水圧変化による危険
周囲の圧力と体の圧力を同じに保つことを「圧平衡」と言います。
地上での気圧が1気圧とすると、水深10mで2気圧、20mで3気圧と、10m潜るごとに1気圧ずつ圧力がかかってきます。
素潜りで注意が必要なことは、マスクと耳の圧平衡です。
マスクは潜っていくと水圧で顔に押し付けられ、眼球は吸い出されるようになり、この状態をマスクスクイズと言います。
これによって目が充血したり、傷ついたりすることがあります。
圧迫を感じたら、鼻から息を出し、マスクの内圧と外圧を均衡させるようにします。
耳抜きはできないまま深く潜っていくと鼓膜の内部に体液がたまり中耳炎になったり、最悪の場合鼓膜が破れたりしてしまいます。
水中で鼓膜が破れると、平衡感覚が失われるため、上がどちらか分からなくなり、上に浮上しているつもりが横に移動しているということも起きます。
また、猛烈な吐き気や、目がぐるぐる回る感覚となり、まっすぐ歩くこともできなくなるため、介助が必要となります。
破れた鼓膜は、ほうっておけば治りますが、破れた部分は膜が薄くなるため、破れやすくなります。
耳に圧力を感じる前から、耳抜きを行い、早めに耳の内外の均衡させるようにしましょう。
酸素欠乏による危険
水中では酸素を吸えません。
息を止めたまま潜水を続けると、脳が酸欠状態になり、失神してしまうことがあります。
これを「ブラックアウト」と言います。
脳の働きを停止させて即死を回避しようとする体の防衛本能といわれています。
特に、深く潜ってから浮上してくるときに、浅場で発症しやすいです。
無理をせずに浮上できる深さを考え、潜りすぎないように注意しましょう。
もし発症した場合は、すぐに呼吸できる環境に移せばほとんどの場合は回復します。
ただし、他に見ている人がいない場合、すぐに呼吸ができる体勢をとることが困難となり、危険度は非常に高くなります。
素潜り中のブラックアウトの救助について訓練を受けたバディが見てる前で、素潜りの練習は行うべきです。
船舶による危険
海洋での素潜りの最中に漁船やモーターボートにぶつけられたり、スクリューに巻き込まれたりといった事故があります。
最悪の場合、死に至ります。
まず事前に船舶の往来の激しいところでは素潜りをしないことが原則です。
そして、潜る前には必ず周囲を見回し、浮上時も音や視界に注意を払っておく必要があります。
また、浮上するときには、上を見上げたり片手を上に浮上します。
これは、乗ってきたボートに浮上の際に頭を直撃しないためです。
浮上スピードにより、頭をボートに直撃した場合は頸椎損傷となり、下半身不随や死亡事故の原因となります。
水面浮上前に360度回転して周りの状況を確認し、頭上の確認をしてから浮上します。
海中生物による危険
サメなど人を襲う生き物や、毒のある生き物が海にはいます。
ほとんどの生き物は人間が手出ししなければ害のないものですが、まれに、危険な種もいるため、知識が必要となります。
危険な生き物の例としては・・・
・イタチザメ
縦縞模様が目印です。
人を襲う鮫です。
カメの甲羅をものともしない歯をもちます。
雑食性が強く、ドラム缶にすら食いつくという話もあるほどです。
※対処法:見つけたらすぐに陸やボートにあがる。長いもので威嚇をする。
※目撃例:母島、孫島、南島
・オニダルマオコゼ
背骨に人間五人分を殺せる毒があると言われています。
鈍感で動かない為、岩と間違えて踏んでしまいがちです。
砂をかぶると、岩と本当に見分けがつきません。
※対処法:ビーチエントリー時に岩に注意。小股ですり足でエントリー。水中の岩をなるべく踏まない。
刺されたら、タンパク質の毒であるため、お湯などで患部を温め、病院搬送。
※目撃例:宮之浜、釣浜、ワシントンビーチ、青灯台
・ハナミノカサゴ
ヒレにアナヒラキーショックを起こす毒があります。
非常にゆっくりと泳ぐため、触ろうと思えば触れてしまいます。
※対処法:触ろうとしない
※目撃例:宮之浜、青灯台
素潜りのトラブルにおける救助方法
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溺れているが意識がある人
・パニック状態の場合
溺れていて、なおかつパニックに陥っている場合は、絶対にその人には近づいてはいけません。
しがみつくようにつかまれ、一緒に溺れてしまう危険が高いからです。
決して近づいたりせず、まずは落ち着くように声をかけましょう。
それでもパニック状態なのであれば、近くにある浮き輪やライフジャケットなど浮力のある物を投げ、捕まるように声をかけます。
安心するよう声をかけ続け、落ち着いたら、後ろから近づいてライフジャケットを着せます。
前から近づくとしがみ捕まれるので必ず後ろから行います。ライフジャケットの襟をつかんで船に引き揚げます。
もし溺者がしがみついてきたときには、故意に沈めたり、叩いたりして意識を失わせる場合もあります。
二重事故にならないように気をつける必要があります。
・パニック状態から落ち着いた場合
声をかけたりする中で溺れていた人が落ち着いた場合は、船から捕まれるものを渡したり、ロープを投げ入れたりして、船に引き揚げます。
安心するよう声をかけ続けることが大切です。
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溺れていて意識がない人
溺れている人を発見したら、遠くから水をバシャバシャとかけます。
もし反応があれば、意識があるということです。
また、「大丈夫ですか」と声をかけてみます。
それでも反応がなければ、近づいていきます。
このとき、うつぶせで溺れているのであれば、足先を両手でもって仰向けにします。
そして後ろから回り込み、口が水の中に入らないように、相手の首を支えながら浮力体を装着します。
※ライフジャケットの場合
まず片方の手を先に通します。このとき、自分の手をライフジャケットに通して相手の手をつかむと通しやすくなります。
片手が通ったら、反対の手を通します。
最後にライフジャケットの背中部分を沈めて相手の体の下に滑り込ませ、チャックを閉めます。
仰向けにする以外の全ての作業は、相手の後ろから、頭越しに行います。
途中で意識が戻ったときにしがみつかれないようにするためです。
ライフジャケットを着せたら、襟をもって船まで運びます。
溺者の曳航には、ライフジャケットよりライフセービングで使用しているフロート(ライフガードチューブ)のほうが曳航しやすいです。
意識を取り戻した瞬間にしがみつかれることを防ぐため、基本的には溺者から距離をおいて曳航することが推奨されます。
心肺蘇生法(CPR)
呼吸が止まり、心臓も動いていないと見られる人の救命方法として心肺蘇生法があります。
なるべく早く心肺蘇生法を行うことで、救命率も上がるので、いち早く実施します。
<手順>
(1)「大丈夫ですか」と声をかけます
(2)下あごを引き揚げ、気道確保します
(3)呼吸がなければ、人工呼吸を2回します
(4)反応がなければ、胸骨圧迫を開始します
(5)胸骨圧迫30回+人工呼吸2回をAEDが到着するまで繰り返します
※胸骨圧迫は1分間に100回のペース
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自動体外除細動器(AED)
心肺蘇生法をしている間に、「119」への連絡と、AEDの手配をします。
AEDは公共施設に設置されていますが、船や車に積んである場合があります。
AEDを見つけたらすぐに持っていき、電源をつけます。
その後は音声指示に従って救助活動を続けてください。
AEDは電気ショックによって心臓の微細動を正常に戻す効果があります。
AEDのパットを装着する前に、よく体をふくようにします。
また、電気ショックをするときには誰も近くにいないことを確認してから行いましょう。
まとめ
たかだか素潜りをするのに、こんなにたくさんのことをしなければいけないのか、と思った人がいるかもしれません。
悲しいお知らせですが、ここに書かれたことは、ほんの一部であり、全てを書ききることはできません。
ここに書かれたことは、私が日々、海に潜るなかで出会った危険や、その都度調べた対処法の殴り書きにすぎません。
言葉というのは、書いたり、話したりすることによって、それ以外を切り捨てないといけない、未熟で不完全なコミュニケーションの手段です。
全てを書き尽くすことも伝えることも、できないことは、初めから分かっています。
なので、海や素潜りのことを知りたければ、最低限死なないようにして、何度も自らの体で海に潜ることです。
イルカと泳ぐのもいいし、魚突きをしたり、日本は海に囲まれた、世界でも類まれな多種多様な生き物が見られる島です。
是非、いろんな海で、見たことのないものを見て頂けたらと思います。
そして、是非、小笠原に来たときには、素潜りの学校のツアーに参加してみてください。
何がみたいかを伝えてもらえれば、可能な限り、それが見られる機会をご用意します。
素潜りにはどんな道具が必要か
何ができないといけなくて、そのためにどんな練習方法があるのか
また、素潜りにはどんな危険があるのか、について書かれたページです。
素潜りはライセンスを必要せず、道具さえあれば、どこでも手軽にできるマリンスポーツですが
危険と隣あわせであり、自己責任の側面が大きいものです。
しっかりと準備と練習が必要となります。
1000人以上の初心者に素潜りを教えてきた体験から、
どのような準備と練習が必要なのかについて、
また初心者がつまづきやすいポイントと、解決方法について、このページでは解説していきたいと思います。