天気を読めるかどうかは、船長をやる上で、最も大切と言ってもいいくらい大切なことです。
なぜなら、天気を読み間違えた場合、大時化の海で、お客様を危険に晒す可能性があるからです。
私は船長を始めたての頃、天気を読み間違って、危険だったことがありました。
お客様は大きな波できゃあきゃあと楽しんでいましたが、私は眼の前に迫る山のような波に、足が崩れ落ちないように支えるのに必死でした。
無事に帰港した後、その日、一日、足の震えが止まらなかったことを覚えています。
それは、潮流と風向きの関係について、当時は知らなかったことが原因でした。
この記事の一番、最後に、そのことは書きたいと思います。
出港前の見立て
前日と当日の未明に、情報を集めます。
まずは、インターネットです。
私はふたつの天気予報サイトを使っています。
小笠原のローカルな天気予報サイト 小笠原村気象情報
このサイトの「JWAポイント予測」をクリックすると、
当日と翌日の1時間きざみの天気と風の強さ、風向きがでてきます。
まず、見るのは風向きと風の強さです。
風から西側から吹く場合、船を出し入れする二見湾に風が吹き込むことになりますから、強い風が長いあいだ吹けば吹くほど、波は高くなります。波は風が海水を揺り動かす力によって発生します。
この場合、出港時よりも入港時のほうが波が高い可能性もありますので、朝の時点で大丈夫でも帰る時点では危険になる可能性があるということです。
海況は、その時点で出港可能かどうか、以上に、これから海況はどうなっていくのかを予測することが非常に大切です。
私は西側から吹く風が8mを超える場合は、かなり慎重になります。
逆に東側から、吹いている場合は、西側は風陰になるため、西側から吹き付けるよりも影響は少なくなりますが、しかし、実際の海況を見てみないと分からないので、あくまで判断材料のひとつとなります。
実際見ないとわからなくても、今後どうなるかは、実際に見ても、今の情報しか分からないので、事前のネットを使った情報収集は必要です。
また、上のサイトで波浪予測メッシュでも3時間毎の波の高さと向きがでてきます。これで大体の波の高さと、これからどうなるかを見立てます。
こういうサイトはおそらく他の地域でもあると思われます。
地元の漁師さんに聞くと、教えてくれると思います。
もうひとつよく見る長期的予想のサイトとして、
WINDY
があります。
こちらのサイトでは、遠くにある台風からの影響などが時系列で分かります。風や、波、海水温なども分かります。
風のタブでみた場合
波のタブでみた場合
風と波では上記のように少しづれがあります。
風が吹いた後、波が高くなる傾向があります。
台風が遠くにあると思っても、うねりが届いてることもあるので注意が必要です。
潮汐
潮汐時間を調べるにはこのサイトで調べます。
https://www.data.jma.go.jp/kaiyou/db/tide/suisan/suisan.php?stn=CC
特に講習をやる前に調べることが多いです。
宮之浜の海に向かって右側でやる場合、潮があまりにも低いと匍匐前進しないといけなくなります。
現地調査
明るくなってきたら、現地調査をします。明らかになぎている場合、風やうねりがない場合は現地調査はしません。
ウェザーステーション
南島に行く時は、ウェザーステーション、そうでないときは、墓地近くの西側が見られるスポットに行き、海況を目で判断します。
ウェザーにいくと、南島の入り口の波の状況が見えます。
ここに白波がたっていたら、南島上陸は難しいことが分かります。
また、湾口、烏帽子岩から野牛山の間も、波が高くなりやすいため、ここを抜けられるかどうかが、出港判断の材料の一つともなります。
西島の東側、兄島瀬戸の出入り口も、潮流と風向きによっては、非常に波が高くなります。
長崎展望台
西側が多少あれており、東側に逃げるという方向性で出港を検討している場合は東も見に行きます。西側があれてなければ、東まで見に行くことはしません。ツアー中の判断でも十分間に合いますし、東が荒れているとわかれば、西側中心にツアーを組めばいいからです。
控えめ予想でいく
予想はなるべく控えめで行きます。
自分が大丈夫と思えるラインより少し余裕をもたせたラインでいかないと、ちょっとでも予想より波が高くなってしまうと危険になるからです。
波の高さは、ちょっとの時間でかなりの変化をすることがあります。
また、乗るお客様が小さなお子様やお年寄りの場合は、さらに基準を下げます。
潮流と風向きの関係
うねりと風以外に、潮の流れ、潮汐が波の高さに深く関わっています。
海には干潮と満潮があり、満潮に向かう時は上げ潮といい、干潮に向かうときは下げ潮といいます。
それに合わせて、1日4回、流れの方向が変わります。
満月、または新月のときに、もっとも、振れ幅が大きく、大潮と呼ばれます。大潮の際は、流れも速いことが多いです。ただし、半月の振れ幅が狭いはずの小潮でも、流れが速い時は速いので、実際に確認するまでは分からないことが多いです。
ここからが、本題ですが、潮の流れの向きと風向きが逆方向になったとき、波は突然に高くなります。
冒頭でお話した、山のような波の中を走った体験は、まさにこれによるものでした。
兄島瀬戸は、上げ潮のときは東から西に流れ、下げ潮の時は西から東に流れます。
そして、大潮のとき、月が満月、または新月のときは、だいたいお昼ごろが干潮となり、午後は満潮に向かう上げ潮になります。
満月、新月のときは、だいたい11:38に干潮です。つまり、その前なら、下げ潮、その後なら上げ潮となります。
それから1日、たつごとにこの干潮、満潮が40分程度、後になります。
なので、昨日が満月だったなら、干潮は12:30ぐらい、今、朝の9時だとしたら、干潮に向かっているから下げ潮、兄島瀬戸は西から東に流れる・・・というように干潮表を見なくても、月を見ていれば、今、どちらに海が流れるか、分かるようになります。
ただ、ここにある干潮表の数値は二見湾内の数値なので、兄島瀬戸あたりの流れは、この干潮表より1時間から2時間の間で、早くなることが多いです。
さて、この日、西からの風が強かったです。
そのため、東側は静かだったので、多少荒れていましたが、大丈夫な範囲と判断し、出港しました。
そして、東側でクジラをみて、午後になって、帰ってこようとしたのですが、西側に出ようとした瞬間、山のような波に阻まれました。
午後のあげ潮と、西からの風向きが逆になったのです。
「大潮の西風は最悪なんだ」と後日、他の船長から聞きました。
こういうことが、最初はなかなかわかりません。
また、場所場所によって、時間帯によって、流れの向きが違います。一定ではありません。
常に変化します。ある程度の法則はありますが、法則があてはまらないときもあります。
思い込まず、常に観察して、現況を優先することが大切です。
まとめ
・インターネットでこれから天気がどう変化するか、よくなるのか悪くなるのか、見立てる
・現地で、実際の要所要所の波の高さ、風の強さを見る
・潮流と風向きが反対になると波は突然高くなる
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